12月。山口県萩市。
女性陶芸家・松本美咲は、冬の寒さの中、冷たい水に手をつけながら器を作り続けていた。
温泉ブームもあり、全国から女性観光客が集まってくる湯布院で
全国女流陶芸作家のコンテストが行われることになった。
全国の女流作家780名の中から50名を厳選。
その中に美咲の名前もあった。
作家を選定したのは、世界的に有名な陶芸評論家・海野陶子だった。
美咲は、婚約者の高杉から
「狭い萩に閉じこもっていないで、チャンスがあれば表へ出た方がいい」
と言われるものの自信がつかめずにいた。
美咲は、どんな作品を目指せばよいのか、陶芸家としてどんな道を歩めばよいのか分からなかったんだ。
自分流の器が見つからない限り、大会に出る意味がない気がする、
と言う美咲に、陶芸家としての道をアドバイスできないことを残念がる高杉。
陶芸の材料を販売している高杉は、集金に訪ねた長安寺の和尚に美咲のことを相談。
「美咲の造形はまだ未熟、
焼き物と言えば備前焼のような「焼き絞め」のものもあれば、「絵付け」もある
彫りもあるしオブジェもある
作風の出口は陶芸家の数だけある」
と言う和尚。
二人とも、緋を走らせるのにふさわしい美咲自身の器を作るのが出口だと考えていた。
次の日、焼物横丁で作品を販売をしていた美咲の前に海野が現れる。
だけど、美咲の器を見て、
「迷ってますね、
成長を楽しみにしていたけれど、何も見るものはなかった」と帰ってしまった。
家に帰った美咲に、借金の取立て屋が返済を要求。
高杉が客の連帯保証人になっていたのに、どちらも姿を消したから
婚約者の美咲に払ってもらうのが当然、ということだった。
その額は、300万円・・・。
そこへ再び海野が現れ、1月末まで支払いは待ってもらえないかと言う。
湯布院の春をテーマにした作品で、
全国女流陶芸作家の大会の優勝者には、300万円の副賞が出る、
美咲は選定ミスだったから別の作家を選定したい、
そのかわり迷惑料として300万円は立て替えておくということだった。
だけど、それは美咲のプライドが許さなかった。
「大変ありがたい話ですが、同情されてまでお金を受け取りたくありません
焼き物を業(なりわい)としてる以上チャンスを下さい!!」
と大会に出場させてもらえるよう頭を下げる。
美咲は自信があるわけではなく、ここから逃げたら陶芸家失格、
自分の器を見つけるためにやるしかないと覚悟を決めた。
今まで緋を走らせることに力を入れすぎていた美咲は、
自分の色、自分の器を見つけるために、コンテストに挑む・・・。
何事もできないとすぐに諦めるんじゃなく、あえて自分にはできないかもしれないという
少し難しいレベルに挑戦して、それを乗り越えることで人は成長する。
美咲は、大会を通して、女だからこそできる、自分だからできることを真剣に探すんだ。
陶芸の道を目指している人も、そうじゃない人も、力をもらえる漫画だよ。
美咲の作り出す器はどれも魅力的で、本当に欲しくなるよ。
「美咲の器」は、ところどころに前作「緋が走る」の名勝負の一部が紹介されているから
まずは「緋が走る」を先に読むことをおすすめするよ。
◆ 陶芸家の職業漫画「美咲の器」について語る ◆
「美咲の器」を読んで陶芸家になった人、陶芸家を
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